中野区役所の区民相談では相続相談の割合が非常に多いです。
今回は相続の概要について簡単にまとめていきます。
目次
1,相続はどの専門家に相談するか?
相続といっても,遺産整理,相続放棄,遺言,遺産分割,使途不明金,遺留分侵害額の請求,不動産登記,相続税等と多岐に渡るため,どの専門家に相談したらよいかわかない方が多いと思います。
そこで,まずあらゆる分野に対応できる弁護士に相談することをおすすめいたします。
弁護士が相談者の現在の問題になっている事象につき,的確なアドバイスを致します。
特に相続となると,相手方(他の相続人)がいるケースが多いと思います。
そうすると,将来的に交渉や話し合いを行うケースが生じます。その場合には唯一代理人になることができる弁護士にスムーズに依頼することがベストになるからです。
例えば,不動産登記であれば司法書士/相続税の申告であれば税理士ですが,
司法書士や税理士のご紹介なども弁護士を通じで行うことができ,ワンストップサービスを図ることができます。
2,相続問題の視点
相続問題は(1)相続発生前か(2)相続発生後に分類できるかと思います。
順番に説明致します。
(1)相続発生前
相続発生前は,①遺言,②財産管理がよく問題になります。
①遺言
遺言は将来自分が亡くなったときに,自分の財産を誰にどうやって分与するのか自分の意思を予め残しておくことができる文書です。
遺言には,自筆証書遺言,公正証書遺言,秘密証書遺言があります。
遺言を作る際には,相続人の把握,遺産の把握などの前提問題のほか,遺言執行者を誰にするかの問題や遺留分を侵害しない範囲で作成するかなどの法律の知識が必要なところがあります。
そして,せっかく作成したのに無効な遺言では意味ありません。
形式的に不備のない有効な遺言を作成する必要があります。
最近,自筆証書遺言については法務局に遺言を保管できるサービスができました(自筆証書遺言保管制度)。
従来,自筆で作った遺言は死亡後,家庭裁判所で「検認」という手続きを経ないといけませんでした。
しかし,保管制度を利用することで,「検認」の手続きが不要になるメリットがあります。
また,法務局で保管されるので,遺言の紛失のおそれや改ざんのおそれを防止できるメリットがあります。
保管申請手数料は 3,900円とお安いところもメリットです。
どのような種類の遺言を作ればよいのか?
それぞれの相談者の背景事情などをうかがい相談に乗ることが可能ですのでお問い合わせ下さいませ。
②財産管理
将来自分が認知症などになったときに財産の管理をどうしようか?認知症にならなくとも銀行に行くのが大変であるから今のうちから財産の管理をしてもらいたい!また子どもがないから頼む人がいない!
などなど
自分の老後の財産の管理をどのようにすればよいのか?という問題があります。
このときに,任意後見制度,財産管理等委任契約,家族信託などが考えられます。
それぞれの制度にはメリットもデメリットも存在します。
たとえば,任意後見制度は判断能力が低下し,任意後見監督人が選任されたときに契約がスタートするのですが,
財産管理委任契約は,正常な判断能力があるときにも,契約をスタートできるメリットがあります(特に,入院中の支払や外出困難な場合などのお金の出し入れなどは財産管理委任契約に適するかと考えます)。
そして,両者(財産管理委任契約と任意後見契約)を併用することがよく行われます。
つまり,判断能力ありのときの財産管理を財産管理等委任契約として,任意後見監督人が選任されたときに任意後見契約に移行するという方法です。
もっとも,後見契約の場合,家庭裁判所への報告や許可など制約なども生じます。
そこで,家族信託という制度もあります。
これは認知症になっても,資産が凍結されることなく,受託者が信託財産の管理・運用・処分ができるというメリットがあります。
信託契約は公正証書によることが望ましく,委託者(財産を託す人),受託者(財産を管理する人),受益者(財産の利益を受ける人)の3者の契約となり,信託口座を作ることになります。実際には委託者と受益者が同じになることが多いです。
もっとも家族信託は財産の管理や処分を委ねるもので,身上監護の面では不十分であったりします。
したがって,いずれの制度を活用するのがベストなのか各相談者の背景によりますので,個別に相談いただればと思います。
(2)相続発生後
次に,相続発生後の問題について説明致します。
相続発生後は,
速やかに事務手続き(金融機関への連絡,死亡届の提出,年金・保険の死亡届,世帯主変更届)を行う必要があります。
次に法律問題と税金問題などを考えていく必要があります。
税金問題については4か月以内に準確定申告をし,10か月以内に相続税の申告,納付をするなどの税金問題になりますが,本記事では省きます(税理士の紹介は可能です)。
なお,令和6年4月から相続登記などの義務化も始まります(相続から3年以内とされており,司法書士を紹介可能です)。
本記事では法律問題を中心にみていきます。
以下,
①相続人及び相続財産の調査及び確定作業
②遺言書の有無の確認(自筆の場合は検認手続)
③相続放棄
④遺産分割
⑤遺留分侵害額請求
という順番でみていきます。
①相続人及び相続財産の調査及び確定作業
(相続人調査及び確定作業)
まず相続人が誰であるかを確定しなければなりません。
誰が相続人であるかはどうやって確認するのか?
それは戸籍で確認することになります。
よくあるのが聞いていた話と異なり,隠し子がいたり,過去に離婚を数回しており,子供もいたなどです。戸籍を確認してはじめてわかることも多いものです。
そして戸籍を読み解ていく必要があります。
これには相続人の順位と範囲の知識が必要になっていきます。
手順としては以下になります。
・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本,改正原戸籍,
・相続人の戸籍謄本
例えば相続人になるべき者がすでに亡くなっているときには代襲相続人が相続人になります。
この場合,代襲相続人の戸籍なども集めるため,戸籍の量が非常に多くなります。
そして,これらの戸籍は銀行や法務局などの手続の際にも必要になります。
戸籍の束を持ち歩くのは大変です。
そこで,現在,法定相続情報証明制度という制度ができました。
これは法務局に戸籍などを提出し,相続情報一覧図を作成すると,
登記官が一覧図に認証文言を付して,この一覧図をもって窓口などで手続きができるようになるものです。
この制度を是非お使いくださいませ。
なお,家庭裁判所の調停などではやはり原則通り戸籍の束が必要なようです(当職の経験)。
(遺産整理~相続財産の調査)
上記相続人の調査と同時に遺産も整理していかなければなりません。
何が遺産かを確定し,はじめて遺産分割協議が可能になります。
遺産はプラスの財産だけはなく,マイナスの財産も遺産です。
そこで,すべての遺産を洗い出し,それに関連する書類をすべて集める必要があります。
そして,正確な額を記入した遺産目録を作成していく必要があります。
現在,遺産整理という業務も流行りとなっております。
関係書類の取得その他をすべて専門家に任せることができます。
ただ相続人の一人が勝手にやると後で他の相続人からクレームが入ることなどもあります。
なので,弊所は遺産整理は他の相続人に異議がないことを確認した上でのみ依頼可能となります。
②遺言書の有無の確認
遺言は,生前の被相続人の意思が反映されたものです。
遺言がある場合,記載された内容どおりに分割を行います。
もっとも,遺言の種類によっては手続きもことなります。
たとえば自筆証書遺言で自筆証書遺言保管制度を利用していない場合は裁判所で「検認」の手続が必要になります。
この場合,封を空けてはいけません。
また,遺言執行者が誰であるかも問題なります。
遺言については下記の記事でも書いておりますので,参照くださいませ。
また,
複数の遺言が見つかった場合はどうなるか?,
相続人全員の合意で遺言に従わないこともできるか?
などの論点も存在します。
そして,付随する問題としては,遺言無効確認訴訟や遺留分侵害額請求などがあります。
そもそも遺言作成時に認知症だったということで争いなることもよくあるものです。
そうならないための対策などもご相談にのることが可能です。
③相続放棄
今まで相続前提に書いてきましたが,もちろん相続をせずに,相続放棄をすることも可能です。
相続放棄をすると,法律上はじめから相続人でなかったことになります。
したがって,プラスの遺産もマイナスの遺産も引き継がないことが可能になります。
もっとも相続放棄は期限に注意してください(3か月以内にしなければなりません)。
※ 熟慮期間(3か月)の延長の手続もあります。
この点,
相続放棄をすべきなのか?
取得分なしとする遺産分割協議をするのか?
どちらでも変わらないのではないないか、という問題があります。
しかし,当職の見解では借金は遺産分割協議では免れることができませんので,借金に焦点をあてると,取得分なしの遺産分割協議ではなく,相続放棄をするほかないと考えます。
相続放棄については下記の記事を参照ください。
④遺産分割
ようやく遺産分割となっても,遺産分割は相続人全員が参加し,全員が合意する必要があります。
そのため,1人でも反対する者がいたり,連絡がつかない者がいたりすれば,遺産分割は争いになってしまいます。
そこで,弁護士に相談,依頼し,交渉・審判・調停などでまとめていく必要があります(140万以上の案件で代理人になることができる専門家は弁護士のみです)。
遺産分割協議,調停については下記記事を参考にしてみてください。
そして,この遺産分割のなかでは,生前や死後の使途不明金などが争いになっている事案も多いです。
使途不明金があるから,遺産分割ができない事案は山ほどあります。
使途不明金について詳細に記載したので下記記事を参照にしてみてください。
⑤遺留分侵害額請求
相続人の1人に全部あげるという遺言があったします。
すると,他の相続人は何ももらえないのでしょうか?
答えはもらえます。
なぜでしょう?
それは法律上,遺留分という最低保証の権利があるからです。
遺留分侵害額請求権というもので,これは侵害された遺留分を相手に対して金銭で支払いを求めることができる権利になります。
また,遺留分の計算対象は遺言だけなのかといえば,そうではありません。
よく問題なるのが生前贈与になります。
・相続開始前「1年以内」の相続人以外への生前贈与
→ 1年以内の贈与の判断は契約時が基準になります。
・相続開始前「10年以内」の相続人への特別受益にあたる生前贈与
→ よくある事例は不動産を買い与えた,住宅資金を出した,借金を肩代わりして支払った,
婚姻のため若しくは生計の資本として贈与したなどの事案があげれられます。
・遺留分権利者に損害を与えることを知りながら行われた生前贈与
→ 贈与当時に損害を加える認識で十分で加害の意思までは必要ではないとされています。
は遺留分の計算対象になります。
遺留分侵害額請求については下記の記事を参照にしてみてください。
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