会社側「業務委託契約や請負契約だから,残業代も払わないし,契約終了に何ら問題もない。」
労働者「業務委託契約や請負契約でも,残業代を請求できるし,解雇は無効である。」
どちらの主張が認められるのでしょうか?
業務委託契約や請負契約でも,労働契約法上,労働基準法上の「労働者」といえるか,という法律上の問題があります。以下,簡潔にみていきましょう。
目次
よく争いになる業種
裁判例では,フリーの映画撮影技師,歩合制の外交員,研修医,芸能プロダクション所属タレント,一人親方の内装大工,メッセンジャー,運送業務の運転手など,フリーランスなど様々な職種で労働者性が争点になったものがあります。
業務委託契約や請負契約という名称で契約を締結している方に,労働契約法や労働基準法の適用はないのか?ということです。
例えば,労働基準法の「労働者」であれば,時間外・深夜・休日の割増賃金を請求できます(いわゆる残業代請求)が,「労働者」でなければ請求できないことになります。
では,「労働者」とはどのように決めていくのでしょうか?
「労働者」について条文の規定
労契法,労基法は,いずれも
①使用性(使用者の指揮命令下で労務の提供をしている者),②賃金性(労務に対する対償を支払われる者)を規定しています。
労基法は,事業の使用されることが加重されているに読めますが,基本的に労契法と労基法の労働者概念は同一と考えてよいです。
①使用従属性は,どのように判断されるのでしょうか?
1,形式や名称ではなく,実態を踏まえて判断します。
業務委託契約や請負契約などの形式や名称によって判断するのではなく,実態から判断をしましょう,というのが実務の考え方になっていきます。
なので,業務委託契約や請負契約などの形式や名称で企業と締結しているからといって,「労働者」ではない,という結論にはならないのです。
2,具体的には様々な要素によって判断されます。
・指揮監督関係の存否,内容
・仕事の依頼,業務指示等に対する諾否の自由の有無
・時間的場所的拘束性の有無
・労務提供の代替性の有無
・服務規律の適用の有無等・・・。
②賃金性はどのように判断されるのでしょうか?
賃金性は「労働者性」の判断を補強する要素になります。
・事業性の有無(機械,器具の負担関係/報酬の額/その他)
・専属性の程度
・その他
例えば,報酬額の要素として,源泉徴収や保険料の徴収等があれば,労働者性との関係ではプラス要素になっていきます。
よく相談のある事例
(労働者側)
・業務委託契約を一方的に打ち切られた。
・業務委託契約を途中で解消すると高額な違約金の請求条項がある。
・残業代は請求できないか。
(使用者側)
・雇用契約にあたると言われ,追徴課税を迫られている。
・業務委託契約を解消したいが問題があるか。
・解雇が無効だと言わてれいる,残業代を請求されている。
・業務委託契約書を作成してほしい。
・雇用契約書を作成してほしい。