パパ活という言葉流行り,世の中にはパパ活にまつわる様々な法律問題が生じています。
今回はパパ活における法律問題のうち,金銭問題に絞って解説をします。
目次
パパ活関係の法律相談
パパ活関係ではストーカーや詐欺など色々と法律問題がありますが,
もっとも多い分野は,男性が女性に貸したお金の返還を求める事案です。
男性は女性との関係を維持するために,お金に困っていると言う女性にお金を貸します。
最初のうちは男性は女性と週1回程度会って,連絡もとれていたのですが,次第に女性と連絡がとれなくなっていきます。しまいには音信不通にまでなってしまった・・・?
男性はハッと目が覚めたかのように女性に貸したお金を返してもらいたいと強く思うようになり,弁護士に相談します。
双方の主張・反論
男性側の弁護士は①金銭の授受,②返還の合意などを立証し,貸金返還請求をしますが,
女性側の弁護士はもっぱら肉体関係を目的とした契約は公序良俗に反し無効であり,貸付金は不法原因給付に該当するため、返還を請求できない。
と反論します。
民法708条は不法の原因に基づいて給付した者からの返還請求を否定する条文です。
法律用語で不法原因給付といいます。
その趣旨はどのようなものなのか?
社会的に非難されるべき行為をした者が自分の損失を取り戻そうとしても法は救済しませんよ(クリーンハンズの原則)という趣旨です。
となると,男性は貸したお金を取り返せないの?????
条文を形式的に適用すると取り返せないように読めますが,裁判例を考察していくと一概にはそういえません。
不法原因給付に関する裁判例の考察
以下,簡単に裁判例を考察していきます。
東京地判平成27年2月18日判決
1,女性の積極的働きかけを契機として貸付けに至ったものであると推認されること(貸し付けの経緯)
2,男性の貸付けの目的が、女性との肉体関係を継続させることのみにあったとまでは認め難いこと(貸し付けの主要な目的)
3,本件貸付けの使途
4,本件貸付後の状況
といった1~4の諸事情を考慮し,本件貸付けが公序良俗に反し、同貸付けに係る金員交付が不法原因給付に当たるということまではできない。
と判断して,男性側が勝ちました。貸したお金を返してもらえる判決になったのです。
もちろん実際の裁判例では事実関係が詳細に記載されております(今回は省略しております)。
実際は当該事案の事実関係こそが重要になりますが,
大きな視点として1~4などの諸事情を考慮し,裁判所は不法原因給付かを形式的ではなく,実質的に判断するものだということがわかります。
東京地判平成30年3月6日判決
こちらは理由を抜粋します(D1 LAW引用)。原告と被告をわかりやすく男性と女性に変えました。
「女性側は、男女の関係を持つことの対価として男性側が女性側に金銭を交付する旨の合意に基づいて男性側が女性側に金銭を交付してきたものであるとして、本件契約の成立を否認する。
男性と女性が知り合った経緯に照らすと、男性が女性に対して金銭を交付した背景に両者間の男女関係があった可能性は否定できない。
しかしながら、同関係の形成や維持の対価として金銭を交付する旨の合意の成立を認めるに足りる証拠はないから、女性側の前記主張は認められない。」
として,女性側の証拠不十分として、男性側が勝ちました。お金を返してもらえるという判決になったのです。
こちらの裁判例は最初に紹介した裁判例と異なり,裁判所は実質的に不法原因給付にあたるかどうかという判断はしてません。
逆に金銭を交付した背景に原告被告間の男女関係があった可能性は否定できないとしてる点も注目です。
そして,女性側が主張している肉体関係の形成の維持や対価としての金銭を交付する合意がないとしています。
話を進めると、この裁判例は女性が勝つには「肉体関係の形成の維持や対価としての金銭を交付する合意」が必要とまで言ってることを読み込むことができます。
そうなると,女性が不法原因給付で貸金の返還を免れるには例えば肉体関係一回につき◯万円を借りるなどの金銭消費貸借契約書などを作っておかなければならなかったといえます。
もっとも事実関係を分析していくと,本裁判例は男性と女性で通常の準消費貸借契約の契約書が作成されている事案であり,
女性もサインをしている以上、その契約書が重視されているのかもしれません。
まとめ
以上,パパ活にまつわる不法原因給付の話でしたが,
民法708条は形式的に適用されるというわけではなく,
事実関係による,
男性側も勝てる可能性があるということを伝えたく,
本記事を書きました。
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弁護士 関真悟