新型コロナウイルス感染拡大の影響で,令和2年4月10日現在,東京都を含む7都府県を対象に緊急事態宣言が出されております。
今後,ますます多くの会社で,自宅待機(休業)や在宅勤務などの対策が取られることになります。
在宅勤務ではなく,自宅待機(休業)になった場合,会社から休業手当は補償されるのでしょうか。
以下,コロナによる休業手当について,ご説明いたします。
目次
1,労働基準法26条と民法536条2項
休業手当に関連する条文として,以下の2つの条文を挙げます。
労働基準法26条
「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては,使用者は,休業期間中当該労働者に,その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」
民法536条2項
「債権者(使用者)の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは,債権者は,反対給付(労働者の賃金債権)の履行を拒むことができない。(以下省略)」
労基法では「使用者の責めに帰すべき事由」,民法では「債権者の責めに帰すべき事由」という似た文言が用いられています。
しかし,その内容はイコールではありません。
民法の「債権者の責めに帰すべき事由」とは,「債権者の故意,過失またはこれと同視すべきもの」に限定されます。したがって,民法536条2項に基づくコロナによる休業手当は認められにくいと考えます。
一方,労基法の「使用者の責めに帰すべき事由」は,労働者の生活の保護のため,民法の定義よりも広くなっております。具体的には,不可抗力を除いて,使用者側に起因する経営,管理上の障害も含まれるとされます(ノース・ウエスト航空事件(最高裁判所昭和62年7月17日判決))。
そして,ここでいう不可抗力とは,①その原因が事業の外部より発生した事故であること,②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの2つの要件を満たすものでなければならないと解されています。
2,コロナによる自宅待機は労基法上の休業手当の対象となるか
労基法の「使用者の責めに帰すべき事由」とは,上記のとおり,非常に広く定義されており,不可抗力に当たらない限り該当します。
そして,今回のコロナウイルスによる自宅待機は,不可抗力に当たらず,使用者は労働者に対して,休業手当を支払うべきであると考えます。
また,個々の事案にもよりますが,先日の緊急事態宣言を受けてもなお,使用者の休業手当の支払い義務がなくなるケースは少ないと考えます。
実際に,加藤厚生労働大臣も令和2年4月7日の会見で,緊急事態宣言を受けて,企業が従業員を休業させた場合,「事業者は,直ちに一律に休業手当を支払わなくてもよいということにはならない」との見解を述べております。
3,最後に
今回ご説明した休業手当以外にも,コロナの影響で弁護士への相談が必要となる場面が増えてくると思います。
どうぞお気軽にご相談ください。
文責:弁護士 渡邊 耕大