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【交通事故】人身傷害保険
交通事故の被害者が使う人身傷害保険という保険について簡単に説明します。
交通事故の被害者は,原則として対人賠償や対物賠償という加害者の保険を使用しますが,表題の人身傷害保険は被害者自身が加入している保険です。約款によっても異なりますが,車を持っている交通事故の被害者は人身傷害保険という保険を利用することができます(人身傷害保険は被害者の過失割合が高い事案等で威力を発揮します)。
法律では,被害者の過失があると,過失相殺されます。被害者に100万円の総損害が発生していても,被害者に4割過失があれば,60万円の損害になってしまうのです。
では,人身傷害保険はどのような威力を発揮するのでしょうか?
簡単にいえば,人身傷害保険を利用することで残りの40万円を回収することができるというものになります。つまり,被害者自身に過失があっても最終的に100万円全額回収できる,ということになります。もっとも,人身傷害保険の利用は,【賠償先行型】と【人傷先行型】というものがあり,利用の仕方によって,40万円を全額回収できるかどうか差が生じてくる場合があります。これは,人身傷害保険は約款の基準によって支払われるものなので,裁判上の基準とは異なるからです。【賠償先行型】と【人傷先行型】のどちらをとるかは細かい交通事故の知識が必要になりますので,弁護士にお早めにご相談ください。
【交通事故】健康保険のメリット?!
● 自由診療と保険診療とは・・?!
自由診療とは,健康保険が適用にならない治療で,治療費は全額自己負担となります。
保険診療とは,治療費のうち,7割が健康保険や健康保険組合が負担し,残り3割を患者が自己負担するものです。
美容外科や歯科医院のなかには自由診療専門のところがあるように,審美的要素が強ければ自由診療になっていきます。
● 交通事故は自由診療が原則だけど・・?!
交通事故の治療は自由診療が原則です。
自由診療なので被害者が全額負担しますが,病院が加害者の保険会社に直接請求することになりますので,実質負担額は0円です。
通常はこれでよいのですが,
【被害者の過失割合】と【治療日数(治療費の総額)】
によっては,健康保険を使うとメリットがあることがあります。
次の例をみてください。
● 例)過失割合40:60,診療報酬点数5万点
治療費 自由診療100万円 健康保険15万円
慰謝料 70万円
休損等 50万円
合計額 自由診療220万円 健康保険135万円
過失相殺 過失4割相殺→132万円 過失4割相殺→81万円
既払金 ▲100万円 ▲15万円
(通常は治療費が支払われています)
受取金額 32万円 66万円
● 他にも・・・?
他には,
- 治療費打ち切り後の通院
- 加害者が無保険のときの通院
などでも使用にメリットがあることがあります。
詳しくはお問い合わせください。
関総合法律事務所 弁護士 関真悟
【交通事故】無保険事故の被害者救済
1,原則
交通事故の被害者は,加害者の任意保険会社が一括対応をすることで,加害者の任意保険会社から治療費,休業損害,慰謝料等を支払ってもらいます(より正確にいうと,加害者の任意保険会社は立て替えを行っているだけで,あとで自賠責保険の範囲内で自賠責保険会社に請求をしています。)。
2,例外
例外として無保険事故というものがあります。
3,無保険事故の種類
自動車やバイクには自賠責保険の加入が義務付けられています。自賠責保険にすら加入していないの処罰の対象になります。自動車やバイクの無保険事故は,1)任意保険に加入していない無保険事故,2)任意保険と自賠責保険に加入してない無保険事故の2パターンにわけることができます。
※ 自転車事故についての補足
自転車には保険への加入が義務付けられていませんので,無保険事故に該当する場合が多いです。
ただし,無保険事故かどうかは再確認してみてください(以下のような保険が使える場合があります)。
・自転車購入時に加入するケースの多いTSマーク付帯保険
・自動車保険等の特約
・個人賠償責任保険
4,無保険事故の対応
では,無保険事故の被害に遭った被害者はどのように対応していけばよいのでしょうか?
必須事項3ポイント
POINT1 軽い怪我でも「人身事故」にしておくこと
POINT2 交通事故証明書記載の自賠責保険会社を確認すること
POINT3 ご自身の保険会社に連絡をして,人身傷害保険,搭乗者傷害保険,無保険車傷害保険,車両保険,弁護士特約等が使えるか確認すること
必須事項3ポイントをきちんと押さえたうえで,どのように治療費や慰謝料などを支払ってもらえるか以下みていきます。
【自分が加入している保険を使う場合】
① 自分が加入している保険を使って治療をする
自分や(注)家族が加入している保険の人身傷害補償特約や搭乗者傷害保険特約などを使用すれば,加入している保険会社に治療費を全額負担してもらえるうえに,休業補償や慰謝料などは最低限の金額のものを支払ってもらえます。 なお,後遺障害や死亡の場合のみに使える無保険車傷害特約というのもあります。
(注)家族とは同居の家族やあなたが未婚の場合は別居の家族を指します。
※ なお,通勤中・勤務中の事故の場合には労災保険も使えます。労災保険は勤めている会社の協力が必要になります。
② ①の支払いを受けた後,無保険の加害者に直接請求する
①は約款に基づく支払いなので,裁判基準(弁護士基準)に照らせば低額ですので,無保険の加害者に①との差額を請求していくことになります。
なお,この際に,自分が加入している保険会社が加害者付保の自賠責保険金を回収した場合の損益相殺などの問題がでてきますが,複雑になるので説明を省略します。
【自分が加入している保険がない場合や加害者付保の自賠責保険を使う場合】
① 加害者付保の自賠責保険を使用する
支払いは限度額の範囲内で、自賠責基準に基づいて行われます。限度額は,傷害の場合120万円限度です。後遺障害がついた場合14級75万円です。
※ なお,通勤中・勤務中の事故の場合には労災保険も使えます。労災保険は勤めている会社の協力が必要になります。
② ①の支払いを受けた後,無保険の加害者に直接請求する
①は自賠責基準ですので,裁判基準(弁護士基準)に照らせば低額ですので,無保険の加害者に①との差額を請求していくことになります。
【番外:加害者が自賠責保険にも入っていなかった場合】
① 政府の自動車損害賠償保障事業を使う
自賠責保険契約が締結されていない場合のほか,轢き逃げ事案の場合などには,政府の自動車損害賠償保障事業から政令で定める限度において損害の填補を受けることができるのです。
※ なお,通勤中・勤務中の事故の場合には労災保険も使えます。労災保険は勤めている会社の協力が必要になります。
② ①の支払いを受けた後,無保険の加害者に直接請求する
①は,裁判基準(弁護士基準)に照らせば低額ですので,無保険の加害者に①との差額を請求していくことになります。
5,まとめ
いずれも,最終的には「無保険の加害者に直接請求する」という結論になります。
加害者への直接請求は損害額の計算を含め,弁護士に相談・依頼されることオススメ致します。
弁護士費用特約は,上述のような事案でも,使用できます。